「優しすぎる人」とは、一言でいうと「自分よりも他人を優先する人」です。他人を別け隔てなく思いやる気持ちがある一方で、自分を捨ててでも相手に尽くしたり気を遣いすぎる一面もあり、自分に優しくできないと「生きづらい」と感じることも。
今回は、そんな優しすぎる人の生きづらさの原因と対処法について解説していきます。
優しすぎる人の心理的な特徴と生きづらい原因
まずは「優しすぎる人」とはどんな人なのかを理解するために、心理的な特徴を3つご紹介します。
【優しすぎる人の特徴】
- 他人に嫌われたくない気持ちが強い
- 他人に迷惑をかけたくないと強く思う
- HSPの気質がある
特徴①:他人に嫌われたくない気持ちが強い
優しすぎる人の1つ目の心理的特徴は、「他人に嫌われたくない」という考えが人一倍強いということ。根が優しい人は、相手に嫌われたり根に持たれたりすることを防ぐために、過剰に優しく接したり、平和主義を貫いて当たり障りなく過ごそうとします。
しかし人との相性は、何をしても波長が合う場合もあれば、何もしなくても険悪になることもあります。人間関係は、以下の『262の法則(パレートの法則)』に当てはまると言われています。
【262(パレート)の法則とは】
- 2割の人は、無条件に好いてくれる
- 6割の人は、どちらでもない(好かれることも嫌われることもある)
- 残り2割の人は、いくら頑張っても波長が合わない
優しすぎる人は、どうしても好かれない2割の人に対しても「嫌われたくない」と願ってしまい、波長を無理に合わせようとして、生きづらさを感じてしまうのです。
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特徴②:他人に迷惑をかけたくないと強く思う
優しすぎる人の2つ目の心理的な特徴は、「他人に迷惑をかけたくない」という気持ちを強く持っているということ。幼い頃から「真面目」と言われていた人は、他人に迷惑をかけていないかどうか、今も常に気にしてしまっているのではないでしょうか。
先ほどの「嫌われたくない」という心理と「迷惑をかけたくない」という心理には、決定的な違いがあります。嫌われたくない心理は、相手の自分に対する矛先に敏感であるのに対して、迷惑をかけたくない心理は、自分の相手に対する矛先に敏感であるということ。迷惑をかけているかを気にしすぎる人は、自身の言動の1つ1つに過敏になり、「迷惑をかける可能性をできる限り排除したい」と考え、他人と関わりを避けるようになります。
しかし人は、他人との繋がりによって幸せや充実を真に感じられる、社会的な生き物。人間関係を必要以上に断つことは、かえって生きづらさを助長させる原因となるのです。
また関わりを避けることで、相手に「私はあの人に嫌われているのかも」と思わせてしまうことも。優しさのつもりで距離を置いたはずが、逆に関係を悪化させてしまうことも往々にしてあります。
優しさとは「一方的に与えればいい」というものではなく、相手の要求に応えて初めて成り立つものです。普段から仲良くしてくれている人に過剰に気を遣うことは、かえって相手を心配させたり信頼を損なう可能性があることに注意しましょう。
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特徴③:HSPの気質がある
優しすぎる自覚がある人は、「HSP」という特性を持っているかもしれません。HSP(Highly Sensitive Person)とは、感受性が強く外部刺激に対して敏感な気質を持つ人のこと。
- 僅かな音にも気づいたり気になる
- 肌に触れる服の素材にこだわりがある
- 人混みにいるだけで雑音や圧迫感で疲れる
- 人が感じない臭いによく気づく
上記の特徴に当てはまる人は、HSPの可能性があります。
HSPの中には、人の気持ちやその場の雰囲気を察する力に長けた人、相手の表情から感情を的確に読み取ることができる人もいます。人の気持ちを察知する能力が高いHSPは、「相手の気分を害したくない」「場の雰囲気を壊したくない」という気持ちが人並み以上に強まり、自然と優しすぎる人になっていくのです。
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優しすぎる人が生きづらさを和らげる方法
ここまで、優しすぎる人の心理的な特徴と生きづらさの原因を解説してきました。
冒頭でもお伝えしましたが「優しすぎる」という心理的傾向は、他人を思いやったり平和的解決に導く力を持っていたりと、良い面も数多くあります。しかしその一方で『薬も過ぎれば毒となる』と言われるように、過剰な優しさは、自分も他人も傷つけてしまう一因になり得ます。
では、優しすぎる人が生きづらさを和らげるには、一体何に気をつけたり実践すれば良いのか?
ここからは、具体的な対処法を2つご紹介します。
対処法①:嫌われる勇気を持ち好きな人に優しくする
優しすぎる自覚があり、人と関わるたびに生きづらさを感じる人は、「嫌われる勇気を持つ」ことが重要です。
嫌われる勇気を持つことは、「迷惑をかけても気にしない」「嫌われることをしても謝らない」といった相手への無礼を自己肯定することではありません。嫌われる勇気とは、ただ「嫌われることもある」と理解することです。
あなたが好きな芸能人やアーティストには、ファンがたくさんいることでしょう。しかし同時に「アンチ」と呼ばれる人も多かれ少なかれいるはず。あなたが尊敬する人でさえ、誰かに嫌われているのです。
嫌われることは悪いことのように思えますが、自分なりに精一杯手を尽くした上でそれでも嫌われた時には「仕方ない」と割り切ることも、健全な人間関係を築くために大切な考え方です。割り切ることは諦めではなく、自分を好いてくれる人に多くの時間を使ったり優しく接することができるという、良い面もあります。
嫌われることを恐れない勇気が、優しすぎるが故の生きづらさを和らげてくれるでしょう。
対処法②:メタ認知を鍛えて自分に優しい人になる
優しさが生きづらさに繋がっている人は、他人を気遣いすぎるあまり自分の心や体を蔑ろにしているケースが多々あります。優しさとは無限に湧いてくるもののように思えますが、精神力は有限です。溜め込み続けたストレスはいつか溢れ、心を壊してしまいます。
他人に本当の意味で優しくするには、まず「自分自身の心に余裕があること」が大前提。優しすぎによる生きづらさを感じているなら、まずは自分自身に対して優しくなることから始めましょう。
「自分に優しくする」というイメージが掴みにくい人は、「メタ認知」を鍛える方法がおすすめです。メタ認知とは、自分の気持ちや行動・状況を客観的に捉えること。自分自身を俯瞰することで、
- 自分が今どれだけ生きづらさを感じているのか?
- 生きづらい原因は何なのか?
- どうすれば生きづらさを解消できるのか?
といったことを冷静に考えられるようになります。
優しすぎる人は、他人に対して無条件に尽くすことができる才能を持っています。その能力を自分に対して発揮するために、メタ認知を鍛えて自分自身を「同じ部屋にいる他人」のように客観視し、他人に優しくする時と同じ感覚で、自分に優しく接してみてください。
まとめ
優しすぎる人の生きづらさの根本原因は、「優しくしなくていい人にまで優しくしてしまう」というところにあります。優しすぎる人は、波長の合わない人に対して無関心になれず、なんとか好かれよう(嫌われないようにしよう)と考えてしまうのです。
今回取り上げた特徴に心当たりのある方は、「嫌われる勇気を持つ」「メタ認知を鍛える」という対処法を実践することで、あなたを愛し信頼してくれる「本当に優しくすべき人」に精一杯尽くすことができるようになります。
そうして人間関係の価値観を「嫌われたくない」から「嫌われることもある」に少しずつ変えていき、生きづらさを少しずつ和らげましょう。