心理学

ドアインザフェイスとは|実践に使える活用例も紹介【営業心理学】

アインザフェイスとは|実践に使える活用例も紹介【営業心理学】

ドアインザフェイスとは「ハードルの高い要求から始め、顧客に提案を断られるごとに要求のハードルを下げていく営業手法」です。

「要求を断ることに対して罪悪感が湧く」という人間の心理に基づく手法でもあり、営業職をはじめとするビジネスシーンで活用されています。

この記事では、実践に使える活用例とともに、ドアインザフェイスとは何かを解説していきます。商談や契約の成約率を上げたいあなたの参考になれば幸いです。

ドアインザフェイスとは

ドアインザフェイスとは

ドアインザフェイスとは、顧客からみてハードルの高い要求をし、提案を断られるごとに要求のハードルを下げていく営業手法です。この手法の狙いは顧客に断る罪悪感を抱かせ、提案商品・サービスの成約(受注)に繋げることといえます。

ドアインザフェイスは、心理学ではお馴染みの「返報性の原理」を応用した交渉テクニックです。返報性の原理とは、相手を助けたり貸しを作ることで「何かお返しをしなければ」という考えが芽生え、自然と自分に対して利益を与えたくなる心理のこと。

基本的に、ドアインザフェイスは義理人情を重んじる日本人や同じ気質をもつ方に対して特に有効とされています。また、押しに弱く物を購入する基準や目安があいまいな顧客に対しても効果的な手法となります。

つまり、「一生懸命な営業マンの提案・押しに弱いタイプの顧客」を対象にドアインザフェイスを活用すれば、おのずと成約率が上がりやすくなるとされているのです。

ドアインザフェイスの活用例

ドアインザフェイスの活用例

ドアインザフェイスの具体的な活用例を提示するために、ここではあなたが「ジュエリーの販売営業」をしていると仮定します。その中で10,000円のネックレス、5,000円の指輪、3,000円のピアスと3つの商品を取り扱っているとしましょう。

その中で、最も価格の安いピアスを1点でも購入してもらえればOK。このようなノルマを達成するために、ドアインザフェイスを活用する手順を解説していきます。

1. 来店した顧客に10,000円のネックレスをおすすめする
2. 顧客に断られたら、続いて5,000円の指輪を提案する
3. それでも断られたら、最後に3,000円のピアスを提案する

この場合のドアインザフェイスの手順は3つ。最高品質という売り文句で最も高額の商品を提案、リーズナブルに高級感を演出できるという売り文句で次に高額の商品を提案、そして最後にお値打ちという売り文句で最も安値の商品を提案していきます。

手順1~2までにあなたの提案を断り続けた顧客は「断ってばかりで悪いな」と少なからず罪悪感を覚えます。そして、最後に提案した商品が安値であるほど、「この値段ならいいか」と購入してくれる可能性が高まるのです。

ドアインザフェイスの2つのメリット

1.  相手に物質的な貸しを作る必要がない

値段交渉や商売においてドアインザフェイスを活用する1つ目のメリットは、「相手に物質的な価値を与える必要がない」こと。冒頭で紹介した返報性の原理を満たすためには、相手に何かしらの貸しを作る必要があります。営業におけるドアインザフェイステクニックでは、物ではなく心理的な価値を与えることで顧客に貸しを作ることができるため、こちらが失う物は実質的に何もないのです。

先ほどの10,000円⇒5,000円⇒3,000円とジュエリーを割引していく事例を、もう一度見てみましょう。このケースでは、自分が相手に物質的な価値を与えておらず、「お客様目線でお買い得の商品を提案してあげた」という心理的な貸しを作ることができます。しかし、実際には3,000円のピアスさえ購入してもらえれば目標は達成できるため、購入されない限りは自分にとってメリットしかないのです。さらには、5,000円や10,000円のジュエリーが購入され、想定以上の利益を得ることも期待できます。

「これだけ断っちゃったから…」という心理的な借りを感じた人は、返報性の原理に則って、その借りを返そうとする心理が働きます。この時、押しや熱意に弱かったり購入基準の曖昧な顧客は、目の前のジュエリーの価値より「借りを返すこと」を重視するため、心から欲しいと思っていなくても商品を購入してくれるのです。

2. 相手に満足感を与えられる

ドアインザフェイスは「顧客を騙すために使う」というイメージを持たれがちです。実際に、ドアインザフェイスを巧みに活用すれば、悪徳商材を売りつけることも可能となるでしょう。

しかし見方を変えると、普通の心理状態だったら絶対に購入されない悪徳商品でも顧客に満足感を与えられる力が、ドアインザフェイスにはあるのです。

ドアインザフェイスの成立には、相手に「値引きに成功した」「自分に有利な交渉ができた」と満足感を与えることが欠かせません。営業側としては想定通りの交渉結果であっても、お客様に想定以上の喜びを与えることができるのです。

あらゆる商品がいつでもどこでもネットで買えるようになった現代においては、「何を買うか?」ということと同じくらい「誰から買うか?」という売り手の価値や評価も重視されます。普通の商品を普通に提供する人より「普通の商品にお得感を加えて提供してくれる人」のほうが、セールスマンとしての価値も実力も高いことは疑いようがありません。

ドアインザフェイスを、ノルマの達成や目先の利益ばかりを求める自分本位ではなく、相手に満足感を与えるべく「他人本位」で活用できる人は、会社にとってもお客様にとっても価値の高い人材へと成長することができるでしょう。

まとめ

ドアインザフェイスは「断る」という行為に対する罪悪感を利用した営業手法です。この一文だけを読めば、非常に悪質な営業手法のように聞こえてしまうでしょう。そこで最後に、ドアインザフェイスを活用する注意点3つを補足しておきます。

  • ターゲットはその商品・サービスに興味を示している顧客に限定しよう
  • 要求のハードルをどこまで下げられるのかを明確にしておこう
  • あなたの要求(提案)に対して、顧客が本心から「YES」と言った場合にのみ成約させよう

このような注意点を踏まえた上でドアインザフェイスを活用すれば、「悪徳商法」「押し売り」などという評判もつきにくくなります。ぜひ今後の営業手法として取り入れてみてください!

 

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