営業職を始め、ビジネスにおいて顧客に商品・サービスを買ってもらわなければ売上を伸ばせないというシーンはよくありますよね。そんなときに知っておきたい営業心理学的な手法を「フットインザドア」と呼びます。
フットインザドアとは何かを知り、その活用方法を押さえておけば、様々な職種で売上を伸ばすことができるのです。
さっそくこの記事では、営業心理学におけるフットインザドアとは何かを解説していきます。売上ノルマを達成して歩合を稼ぎたいあなたは必読!
営業心理学におけるフットインザドアとは
営業心理学におけるフットインザドアとは「段階的要請法」を指します。最初は、顧客に対して小さなお願いをして「YES」を引き出し、段階を追って要求レベルを引き上げる手法と覚えておきましょう。
フットインザドアは「一貫性の原理」を巧みに活用した営業手法ともいえます。一貫性の原理とは、「自分自身の発言、行動、信念、態度に一貫性をもたせたい」という人間の心理を指す概念です。
つまり、あなたの要求に1度でも「YES」と答えた顧客は、続く要求にも「YES」を出し、自分の返答に一貫性をもたせたくなるというわけです。
営業心理学におけるフットインザドアの活用例
フットインザドアの具体的な活用例を提示するために、ここではあなたが「化粧品の販売営業」をしていると仮定します。知っての通り、化粧品は世の中に数多く出回っており、有名なブランドも無数に存在します。
その中で売上を伸ばさなくてはならないというとき、このフットインザドアを活用するのが効果的です。それでは、顧客の心理解説とともに「小さなお願いから始めて商談成立」に持ち込む手順を解説していきます。
【フットインザドアの活用例】
①無料で化粧品サンプルを提供…顧客は無料商品にYESを出す可能性が高い
②セット提供できる割引キャンペーン中の化粧品を提案…「一貫性の法則」で顧客からYESを引き出す
③顧客の肌悩みに合わせて通常価格(定期購入)の化粧品を提案…同じく「一貫性の法則」を活用
この場合のフットインザドアの手順は3つ。無料商品、セット割引商品、定期購入の順番で徐々にハードルの高い要求に引き上げていくというテクニックです。
フットインザドアを活用するメリット2選
営業や交渉に心理学を応用したテクニックを用いることで、成約率を上げたり失敗のリスクを下げる効果が期待できます。ここからは、フットインザドアを活用した時の具体的な2つのメリットについて解説していきます。
【フットインザドアを使うメリット】
①失敗のリスクを減らせる
②相手に納得感を与えられる
メリット①:失敗のリスクを減らすことができる
フットインザドアを営業に取り入れることで、成功率アップを期待できることはもちろん、「失敗のリスクを減らせる」ことも大きなメリットとなります。
例えば、お客様に最終的に1万円の商品を買ってもらいたいとしましょう。商品の種類や相場にもよりますが、知り合って間もない営業マンにいきなり「1万円を支払ってください」と言われて即決する人はそうそう多くなく、売上を出せないこともあるでしょう。
この時にフットインザドアを活用することで、以下のように段階的に商品を買ってもらう可能性が生まれ、売上0円のリスクを減らすことができます。
ステップ1. まずは無料で試してもらう
ステップ2. 1000円で数回お試し(段階1)
ステップ3. 初回限定価格の5000円で提供(段階2)
ステップ4. 定価の1万円で購入してもらう(本命の要求)
ステップ5. そのままリピーターになってくれる可能性も
このように、フットインザドアを活用することで「0か100か」の極端な交渉を防ぐことができ、売上を立てやすくしたり営業失敗のリスクを減らすことが期待できるのです。
メリット②:相手に納得感を与えられる
フットインザドアを営業に活用する2つ目のメリットは、お客様に「納得感」を与えられること。段階的に要求を提示するというフットインザドアの手法上、相手に自ら落とし所を見つけてもらうことができます。
言い換えると、フットインザドアは「営業マンに説得させられた」というネガティブな印象を与えにくいテクニックであり、こちらが提示した商品をお客様の意思で気持ちよく買ってもらうことができるのです。
フットインザドアによって納得感という付加価値を与えられれば、将来的にリピーターになってもらえたり返品やクレームなどのトラブルを減らすこともできたりと、営業マンとしての評価も自信も積み上がっていくでしょう。
フットインザドア活用時の注意点3選
フットインザドアは人の抗えない心理を利用した有効な交渉テクニックですが、活用する際には注意点もいくつか存在します。この章では、フットインザドアをこれから使ってみたい方に向けて、実践時に守るべき注意点を3つご紹介します。
【フットインザドアの注意点】
①要求は徐々に引き上げること
②小さな要求を本命と関連付けること
③同じ相手に何回も使わないこと
注意点①:要求は徐々に引き上げる
フットインザドアを活用する際に最も注意すべきことが、「要求を徐々に引き上げる」という点です。お客様の「YES」を引き出す小さなお願いと本命の要求の差があまりにもかけ離れていると、フットインザドアの成功率は下がってしまいます。
本命の要求のハードルが高ければ高いほど、相手のペースを見ながら価格やサービス内容を段階的に引き上げていきましょう。
注意点②:小さな要求を本命の要求と関連付ける
フットインザドアの成功率を上げるコツは、最初の小さな要求と本命の要求を「関連付ける」ことです。
例えば、
- 高額商品の期間限定セール
- サブスクリプションの無料お試しプラン
- 本命商品のダウングレードモデル
といったように、商品は同じでも価格を下げたり本命よりランクの下がった低コストな商品を提示することで、関連する本命商品の購買意欲を高めることが期待できます。
このためフットインザドアを有効活用するには、相手の潜在的な欲求や経済状況に合わせて交渉できるように、提案する商品や価格帯などのプランを事前に練っておくことが重要です。
注意点③:同じ相手に何回も使わない
フットインザドアのような人の心理を利用して営業を成功させるには、相手にテクニックを悟られないことが大前提です。手の内を知る相手に同じパターンで営業を行っても、交渉を有利に進めるどころか「ノルマの為に商品を買わせようとしている」と思われて、営業が失敗に終わることも。
そのため、フットインザドアを活用する際は「同じ人に何回も使わない」という原則もしっかりと守りましょう。
また、フットインザドア以外の営業テクニックも身につけておくことで、交渉術にバリエーションが生まれて成功率を上げることができます。フットインザドア以外に押さえたい交渉テクニックが、「ドアインザフェイス」です。
ドアインザフェイスとは、最初にハードルの高い要求を提示して断られるごとに段階的に要求レベルを下げていくという、フットインザドアの順序を逆にした営業手法です。このように複数のテクニックを学んでおくことで、相手に合わせた最適な交渉を行うことができます。
ドアインザフェイスについて詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご参照ください。
-
ドアインザフェイスとは|実践に使える活用例も紹介【営業心理学】
ドアインザフェイスとは「ハードルの高い要求から始め、顧客に提案を断られるごとに要求のハードルを下げていく営業手法」です。 ...
続きを見る
まとめ
私たちは、いきなり高額商品を売りつけられることに「危機感」を抱きます。その商品が高額であるほどにコストを抱えるリスクを考え、どのような営業マンに対しても一貫して「NO」と言いたくなるのです。
まずは、営業心理学におけるフットインザドアの手法を活用することをおすすめします。フットインザドアとは何かを知った今、売上アップを見込めるテクニックがまた1つインプットできたはずです。