音や光などの刺激に対する感受性が強く繊細な性格のHSPは、「人間関係リセット症候群」になりやすいと言われています。人に気を遣いすぎて人間関係に疲れてしまい、関係を修復する前に衝動的にLINEやSNSをブロックしてしまうのです。
HSPは、なぜ人間関係をリセットしやすいのでしょうか。HSPの心理や人間関係の築き方の特徴などを知ることで、人との繋がりを無闇に絶つことなく健全な関係を続けることができるでしょう。
今回は、HSPと人間関係リセット症候群の関係性やHSPが充実した人間関係を作るための心得について解説していきます。リセット癖に悩んでいたり、衝動的に縁を切ってしまって困った経験がある方は必見です。
人間関係リセット症候群とは?
HSPと人間関係リセット症候群の関係について知る前に、まずは「人間関係リセット症候群」とはどんなものなのか、簡単に復習しましょう。
人間関係リセット症候群とは、現実的な人間関係やインターネット上での人との繋がりを衝動的に絶ちたくなる心理や、実際に連絡先を消したりSNSをブロックして半永久的に絶ってしまう行為のことです。「症候群」と言われていますが、人間関係リセット症候群は病気ではなく、その人の「癖」や「意識」と表現するほうが正確でしょう。
誰にでも苦手だったり相性の合わない人は存在していて、その相手と縁を切ること自体は悪いことではありません。人間関係リセット症候群が一般的に「良くないもの」とされている理由は、主に以下の2点です。
- 人間関係がうまくいかない原因を明らかにしたり反省する前にリセットしてしまい、また同じ失敗を繰り返す可能性があるから
- 特定の人だけでなく、現在繋がっている全員との関係を衝動的に絶ってしまう恐れがあるから
特に外部からの刺激に敏感で神経質な性格の人が多いHSPは、ストレスを溜め込む傾向があり、耐えきれなくなると衝動的な思考や行動をとってしまいがちです。また繊細なHSPは、特定の人とトラブルが起こった時に「人間関係そのものが合わない」と思い込みやすく、全員との関係を絶って一からやり直したほうが楽という発想に至りやすいのです。
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人間関係リセット症候群の特徴
人間関係リセット症候群を持つHSPには、主に以下の特徴が当てはまります。自分が人間関係リセット症候群を持っているかどうか、簡易的に診断してみてください。
【人間関係リセット症候群を持つ人の特徴】
- 一人の時間がないとストレスを感じる
- 他人と常に繋がっている状態が落ち着かない
- SNSでフォローしている人の発言が気になってしまう
- 人からの頼み事を断れない(断ったら嫌われるかもと感じてしまう)
- 人に気を遣いすぎて一人になった瞬間にひどく疲れを感じる
- 相手の言動の真意が気になって詮索したくなる
- 自分に自信を持てず人と親しくなることが恐い
上記の特徴は、「繊細さん」と呼ばれることもあるHSPの特徴とどれも共通しています。HSPの人間関係リセット症候群は、相手を思いやって距離を置く場合もあれば、自分が傷つくことを防ごうとして衝動的に縁を切ってしまうケースもあります。
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HSPが人間関係をリセットするメリットとデメリット
冒頭でお伝えしたように人間関係のリセット自体は、「断捨離」と同じような発想で考えれば必ずしも悪いことではありません。人間関係を一からやり直すことのメリットとデメリットを比べてメリットのほうが多ければ、縁を切るという選択が最適なこともあります。
続いては、HSPが人間関係をリセットすることのメリットとデメリットについてそれぞれ紹介していきます。
人間関係リセットのメリット
HSPが人間関係をリセットする「メリット」は、次の2点です。
- より自分に合う人間関係を築く機会を作れる
- 自分が大事にしたい人が誰なのかが分かる
人に気を遣いすぎたり要求を断ることが苦手なHSPは、自分でも気づかないうちに繋がりが広がっているということがよくあります。気の合う人と繋がる分には素敵なことですが、中にはその場に合わせてSNSをフォローしただけの人や、付き合いで仕方なくLINEを交換した人もいるでしょう。
苦手な人だけでなく、このような「関心がない人」との繋がりが増えることこそ、HSPにとっては重荷なのです。そうして過剰に増えた人間関係をいったんリセットすることで、自分にとって快適な人間関係のキャパシティを取り戻すことができたり、これまでの反省を活かしてより相性の良い人に巡り会えるということもあるでしょう。
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人間関係リセットのデメリット
人に嫌われたくない気持ちが強いHSPは、人間関係をリセットすることの「デメリット」についても理解しておくことが大切です。人間関係をリセットする際には、以下の3点に注意しましょう。
- リセットした相手に不信感を抱かせる
- 衝動的にリセットすると仲の良い人との縁も絶つ恐れがある
- 人間関係をリセットしても根本的な問題は解決しない
人間関係のリセットとは、相手に事情を話さないまま一方的に連絡手段を断つ行為です。自分にとってはただ連絡先を消しただけのつもりでも、相手からすると「もう話したくない」といきなり宣告されたようなもので、不信感や嫌悪感を抱かれてもおかしくないのです。
また人間関係をリセットしたくなる時は、ストレスによって冷静な思考ができず、衝動的に行動しやすいタイミングでもあります。その状況で人間関係を理性的に整理することは難しく、ワンタップで大事なグループを抜けたりアカウントを消してしまい、冷静になった頃に後悔してしまうこともあるでしょう。
さらに人間関係を衝動的にリセットすることの最大のデメリットは、今の人間関係をすべて無かったことにしても、
- なぜ人間関係が嫌になったのか?
- 人間関係を改善する方法は無かったのか?
- 自分が反省すべきところはどこか?
といった自分自身の問題に向き合うことができず、またいずれ同じ理由で人間関係に悩まされる恐れがあるということです。自分の失敗や改善すべきことに目を向けず、他責思考でリセットを繰り返していては、本当の信頼関係を築くことは難しいでしょう。
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人間関係をうまくリセットするための心得
メリットの多い人間関係のリセットを行うには、以下の3つの心得を守るようにしましょう。
【人間関係リセットの心得】
- 衝動的にリセットしない
- 苦手な人と距離を置くことから始める
- リセットするなら人を選ぶ
心得①:衝動的なリセットは絶対にしない
ストレスを溜め込みやすい性質を持つHSPの方でも、人間関係の「衝動的なリセット」だけは絶対にしないように気をつけましょう。感情的になって全員の人間関係を絶つと、嫌な人との縁を切ることはできますが、同時に信頼していた人との繋がりを自ら捨てることにもなってしまいます。
家族や親友を含む全員の人間関係を不可逆的に絶つことは、基本的に推奨しません。なぜなら信頼関係は、深めるのに時間がかかる反面、失う時は一瞬で取り戻すことも困難だからです。
人付き合いが器用ではないHSPだからこそ、信頼し合っている人との繋がりは絶対に絶たないでください。その人は、自分が悩んでいる時に助けを求められる大切な存在なのです。
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心得②:苦手な人と距離を置くことから始める
人間関係が嫌になっても、いきなり全部をリセットするのではなく「苦手な人と距離を置く」ということから始めましょう。人との繋がり自体を重荷に感じやすいHSPですが、冷静に考えると「特定の人にだけ悩まされている」と気づくことも少なくありません。
苦手な人と会う時間や回数を減らしたり相手のアカウントを非表示にするなど、人間関係をいきなり全体から変えようとするのではなく、まずは個人間の悩みや問題に向き合うことを心がけましょう。
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心得③:リセットするなら人を選ぶ
もし人間関係をリセットしたくなったら、考えなしに全員の連絡先を消すのではなく、以下の「断捨離」の発想で縁を切りたい人を選ぶようにしましょう。
断:苦手な人と関わらない、繋がりを無闇に増やさない
捨:苦手な人と距離を置く、苦手な人だけブロックする
離:人間関係に執着しない、人に期待しないで自分で自分を幸せにする
人間関係には『パレートの法則』が当てはまると言われています。パレートの法則とは、人間関係において相性の合う人・どっちでもない人・合わないの割合が「2:6:2」になるという法則です。
人間関係を整理したくなった時は、信頼できる2割の人との繋がりはこれまで通り保ってください。残りの8割の人たちは、ストレスに悩まされるくらいなら思いきって絶つことで、人間関係を健全化できるでしょう。
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まとめ
気遣い上手な一方で繊細な性格のHSPは、人間関係の悩みやストレスを溜め込みやすく、人との繋がりを衝動的にリセットする傾向があります。リセットすることでその瞬間は楽になれるかもしれませんが、これまで築いてきた信頼も崩れることになり、長い目で見れば豊かな人間関係を築くことは困難になるでしょう。
もし人間関係に悩んだ時は、今回ご紹介した心得を思い出して、後悔しないリセットを行うようにしましょう。